緑内障とは
網膜で受けとった視覚情報を電気信号に変えて脳へ送る視神経が障害されて、視野欠損や視野狭窄を起こす病気です。視野は片目で見た場合に上下左右に見える範囲で、緑内障が進行すると視野の一部が欠ける視野欠損や、視野が狭くなる視野狭窄を起こし、進行すると視野の中心まで見えなくなって失明に至る可能性があります。日本人の中途失明原因として長年第一位を占めているのが緑内障です。緑内障で失われた視野を取り戻すことはできません。緑内障はできるだけ早く発見して進行を止め、適切な治療を続けることが重要な病気です。
視野の欠損や狭窄があっても両目で見ていると視覚情報が補完されるため進行してから自覚症状が現れることが多くなっています。早期発見のためには、緑内障発症のリスクが高くなる40歳になったら定期的に眼科検診を受けるようにしてください。
原因
眼圧が高い状態が続くと視神経が障害されて緑内障を発症することはわかっていましたが、眼圧が21mmHgまでと正常範囲で発症する正常眼圧緑内障のケースが多数を占めており、眼圧以外の要因が緑内障の発症に大きく関与していると考えられています。視神経が弱い、血流不足、免疫異常など、さまざまな要因の関与が指摘されていますが、緑内障発症のはっきりとした原因はまだわかっていません。
検査
見え方や既往症などについて丁寧に問診を行い、緑内障やそれ以外の病気の有無や程度を調べるために下記のような検査を行います。
視力検査
視力の低下は緑内障をはじめとした多くの眼科疾患で生じます。進行の程度を知るためにも視力検査は不可欠な検査です。
眼圧検査
眼球を球状に保っている内側からの圧力を調べる検査です。空気を当てるなどによって測定します。
眼底検査
眼底は目の奥のことで、そこに広がる網膜や血管、そして視覚情報を脳に伝える視神経の状態を観察します。
視野検査
一点を注視した状態で、周囲に見える範囲を測定する検査です。視野計という検査機器を使って調べます。
光干渉断層計(OCT)検査
眼底に広がっている網膜を断層画像として表示し、視神経繊維の状態などを詳細に調べることができる検査です。
隅角検査
眼球内を流れる房水の出口である隅角の状態を調べる検査です。隅角は角膜と虹彩の間にあり、隅角を調べることで緑内障のタイプを調べることができます。
治療方法
点眼薬による薬物療法、レーザー治療、手術があります。
基本的に眼圧を下げる点眼薬による治療を行い、薬物療法で眼圧が十分に下がらない場合や隅角が狭い場合などではレーザー治療を検討します。眼圧を下げるために房水の新たな出口をつくる手術が必要になることもあります。
点眼治療
房水の産生を減らす点眼薬、房水の流出を促進させる点眼薬に大きく分けられます。経過を観察しながら、点眼薬の処方を調整します。数種類の点眼薬を併用することもあります。
レーザー治療
眼圧は、眼球内の房水の量が多すぎると上昇します。房水の出口が狭い閉塞隅角の場合、激しい頭痛や吐き気などに突然襲われる緑内障発作を起こす可能性があり、適切な治療が遅れると失明に至る可能性があります。閉塞隅角であることがわかった場合には、レーザー虹彩切開術を行うことで緑内障発作を予防することができます。
また房水の出口が広い開放隅角でも、点眼治療で眼圧が十分に下がらない、または視野異常が進行してしまう場合には、隅角の線維柱帯に選択的レーザー線維柱帯形成術を施して房水の流出がスムーズに行われるようにします。
レーザー虹彩切開術(LI)
角膜と水晶体の間にある薄い膜状の虹彩にレーザーで小さな穴を開け、房水の流出のためのバイパスをつくる治療法です。隅角が狭いことで房水の流出が滞っている閉塞隅角の治療に有効です。治療から時間が経過して周辺に癒着が生じた場合には、眼圧を下げる効果が不足するため、点眼によるコントロールが必要になります。点眼でも眼圧が十分下がらない場合には線維柱帯切除術による手術が必要になりますので、連携している高度医療機関をご紹介しています。
レーザー線維柱帯形成術(SLT)
房水が流れるシュレム管の手前には線維柱帯というフィルターの役割を果たす部分があります。この線維柱帯にレーザーを照射して、房水の排出をスムーズにする治療法です。点眼麻酔だけで痛みもほとんどなく行うことができ、外来で受けられます。効果が望めないケースがあり、眼圧低下効果もそれほど高くはなく、数か月で効果が失われてしまうこともありますが、患者様への負担が少ないため、定期的なメンテナンスを行うことで良い状態を保つことができます。
緑内障手術
点眼治療、レーザー治療でも改善が難しく、視野異常が進行してしまう場合には、手術が必要です。当院では手術が必要な方に連携している高度医療機関をご紹介し、適切な手術をスムーズに受けていただけるようにしています。
